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絵本のマル秘テクニック

もともとはSリシター出身で、かつては支社マーケティング本部の副本部長も務めたことがある。 内情に詳しいだけに、その改革を柱に据えたプロジェクトのリーダーになることには強い抵抗を感じた。
生損保相互参入が始まれば、確かに競争は厳しくなるだろう。 数字が落ち込むことも、10に予測される。
だから何かをやらなければならないのは分かるが、今のところ業績が悪くない支社マーケティング本部をいじることになれば、ものすごい反発するに違いない。 「敵をたくさんつくることになりそうだな」F井は、社長室を出ると重い気分でそう咳いた。
社長命令となれば、やらざるを得ない。 それに、会社の将来を見据えた改革の狙いは痛いほどよく分かる。
F井は、ひそかにチームメンバーの人選に入った。 役員や部長クラスのコンセンサスを得るため、コンサルティング会社の選定にはじっくり時間をかけることになったが、F井に白羽の矢を経てたT園の気持ちには迷いがなかった。
この時期のT園は、リエンジニアリングに関する書物や資料を読みあさり、Aリコにおける経営改革のイメージを固めることに集中していた。 当時の手帳に、T園は英語交じりでこう書きつけている。

目覚ましい(ドラマチック)5〜10%の改善ではない劇的な躍進。 革命的(ラディカル)改善ではない、ゼロからのやり直しと組み直し。
プロセス…顧客に価値ある仕事を提供する手段処理過程を根本的に変える。 つくり直し(リデザイン)仕事の効率化を組織的に成功させるプロセスづくり。
言うべきことを言えるコミュニケーション能力/有言実行の行動力。 容赦ないものでなければならない/シンプルでなければならない/ドラマチックで組織全体として、新しい仕事のやり方や生き方を売れ。
1995年9月、プロジェクト準備室が開設された。 分析や知ることよりも探検と発見を重視せよ、未知への旅である。
〉このメモを見ると、リエンジニアリングという考え方が完全には理解されていなかった当時において、T園がAリコのリエンジニアリング像を自分自身の言葉で掘り下げようとしていたことがよく分かる。 リエンジや情報通信技術の導入といえば、概略だけをつかんで、あとは担当部門の長に責任を振ってしまう経営者が一般的だが、自ら学び変わろうとするT園の姿勢には大いに見習うべきものがあろう。
2000年6月に行ったT園へのインタビューにおいて、プロジェクトメンバーの人選の基準を尋ねたことがある。 「クレイジーであること」笑いながらのT園の答えだった。
「新しいことをやるためには、常識的な人間じゃ駄目。 大胆なくせに思いやりがあって、言うべきこともズバリと言う。
社員の抵抗も強いはずだから、ダフな体力と精神力も欠かせないリーダーのF井が準備室メンバーに選んだのは、支社マーケティング本部課長のT瀬俊一、同部係長のM田淳、ニュープロジェクト部課長のI原政満、顧客サービス部のE老名敦尚のまったくの手探り状態からの出発だった。 パートナーになるコンサルティング会社もまだ正式には決まっておらず、丸の内にあるAIGビルの14階に確保した準備室に机を運び込んでも、何から始めていいのかさっぱり分からない。
とにかく、全員でリエンジニアリングに関する勉強を始め、T園に指摘された改革のポイントなどを議論することにした。 「リエンジは目先の改善じゃなくて、根本的な業務プロセスの見直しだ。
既成概念にとらわれずに、真っ白な紙にあるべき姿の絵を描いていこう」リーダーのF井は、若いメンバーに向かってこう宣言した。 「生損保相互参入が始まれば、本当に支社マーケティング本部の売上げは激減するのか」「激減するとしたら、何から手をつければいいのだ」「今つくり込みが進んでいるALEXは、支社マーケティングラインの改革につながる4名だった。

すでに述べたように、ALEXとは代理店や直販社員(Aリコではコンサルタントと呼んでいる)向けの営業支援シールで、携帯パソコンを使って保険商品のプレゼンテーションややないか」保険プラン設計書の作成を行うことができる。 この初代モデルは95年2月に開発され、徐々にバージョンアップが進んでいた。
代理店に積極的に使ってもらえば、代理店をフォローする支社.営業所の事務作業は効率化し、SリシターやKラーク(女性事務スタッフ)は本来の意味での「企画提案型営業」に専念できるようになるのではないか。 「プロデューサーには年輩の人が多いからなあ。
まず、パソコンを覚えてもらうところから始めなきゃいけないぞ」プロデューサーとは、Aリコ社員が代理店や直販社員など保険募集人を呼ぶときの総称で急いで断っておくが、1995年の会話である。 当時、携帯パソコンはおろか、デスクトップパソコンでさえ今日ほど普及していなかった。
パソコンを使いこなしているのはまだほんの一部の人だけで、インターネットの利用者も限られていた。 メンバーの懸念も、もっともな話だった。
「セクションVが、そろそろ試験導入段階に入ります。 とりあえず、このプロジェクトだけでもJエミニにサポートしてもらったらどうでしょう」こう提案したのは、M田だった。
M田は支社マーケティング本部の戦略立案グループに所属し、支社マーケティング本部の新しい方向性を探っていた。 Jエミニからの提案を受けるまでもなく、時代の変化を察知した彼らはさまざまな改善策を探っていたのである。
セクションVとは、営業三課にちなんだネーミングで、一定の業績水準に達していない代理店を三課で一括管理し、業績の向上を促そうというプロジェクトだった。 支社マーケティング本部の組織は、全国の支社や営業店にSリシターとKラークを配置し、Sリシターが複数の代理店を担当してその販売活動(保険募集)を後押しするという形をとっている。
当然、Sリシターは業績の低迷している代理店のフォローにも力を注がなければならないが、その分、業績のいい代理店のフォローがおろそかになってしまうという悩みを抱えていた。 その非効率性を改善するために、業績低迷代理店を専門部署で集約的にフォローし、Sリシターの負担を軽減する。

セクションVの主な狙いだった。 「確かに劇的な改革につながるよな」「俺もSリシターの経験があるけど、遠方の代理店を訪ねると2時間も3時間もかかる場合が少なくない。
一定以上の業績が見込めない代理店だと、かかった時間が業績に反映されずにコストロスにつながってしまう」「人情として、どうしても業績が低迷している代理店からは足が遠のいてしまう。 専門部署での集約的なフォローを徹底すればSリシターも助かるし、代理店にしても、Sリシターがたまに顔を出してくれるよりもキチンと面倒を見てくれる部署があったほうが嬉しいじゃないだろうか」真っ白な紙に、少しずつ線が引かれ始めた。
ミーティングを終えた5人は、居酒屋に繰り出しビールで喉を潤した。 外はまだ、残暑が「ところで、プロジェクトの名前がほしいね」「これまでもいろんな改善計画があったけど、不成功に終わったものも多いです。
だから、従来のものとは根本的に違うという意味で、スーパーリエンジニアリングプロジェクト。

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